飲食店向けおしぼり「演出術」

飲食店向けおしぼり「演出術」

「おしぼり」は、飲食店にとってごく当たり前の備品に見えますが、実は“お店の印象を決める最初のポイント”でもあります。
同じおしぼりでも、「何枚出すか」「いつ出すか」「どんな温度や香りで届けるか」で、お客様の受け取り方は大きく変わります。
今回は、サービス導線の中でおしぼりをどう活用すれば、より心地よい体験につながるのかを、具体的な演出術としてご紹介します。
「何枚出すか」「どのタイミングで出すか」「温度や香りでどう演出するか」など、サービス導線の中でのおしぼり活用術をお伝えしたいと思います。

1. 何枚出すかで伝わる「気配り」

シーンに応じて枚数を変える

おしぼりの枚数は、“お店がどこまで気を配っているか”の分かりやすいサインになります。
例えば、以下のようにシーン別に考えると、お客様にとって「ちょうどいい」枚数が見えてきます。

  • ランチの回転重視シーン
    基本は1人1枚で十分ですが、油物が多いメニューや手づかみメニュー(唐揚げ、手羽先、サンドイッチなど)が中心の場合は、初めから2枚用意しておくと安心感が生まれます。
  • ディナー・お酒中心のシーン
    最初の1枚に加え、グラスが増えてきたり、料理が一段落したタイミングで「替えのおしぼりはいかがですか?」と2枚目を提案すると、“長居歓迎”の雰囲気を自然に伝えられます。
  • ファミリー・お子様連れのシーン
    子ども用に小さめのおしぼりを1枚追加したり、汚れやすいメニューの前に予備を置くことで、「子どもへの配慮がある店」という印象を残せます。

「予備を用意している姿」をさりげなく見せる

テーブルには1人1枚だけ置きつつ、ホールスタッフが腰ポーチやワゴンに予備のおしぼりを忍ばせておくのもひとつの演出です。
飲み物をこぼしたり、ソースが手についたりした瞬間に、すっと追加のおしぼりを差し出すことで、「困る前に動いてくれる店」として記憶に残ります。

2. どのタイミングで出すかが“流れ”を作る

「来店直後」は最初の安心感づくり

来店後、席に案内してすぐのおしぼりは、「まずは落ち着いてください」というお店側からのメッセージです。
特に夏場の暑い日や、冬の冷たい風の中を歩いてきたお客様にとって、最初のおしぼりは体温と気持ちをリセットする役割を持ちます。

  • 席に着席 → メニューをお出しする前、もしくは同時に配布
  • 「お足元の悪い中ありがとうございます」などの一言と一緒に手渡す

この流れを徹底するだけでも、“丁寧なお店”という印象につながります。

「料理の合間」にリセットの一枚を

コース料理や長時間滞在が多い店では、途中で1度おしぼりを入れ替えると、気持ちと口元をリフレッシュできます。

おすすめのタイミング例

  • 揚げ物や手づかみ料理が終わった頃
  • メインディッシュの前
  • デザート前のドリンクと一緒に

「お料理も後半になりますので、新しいおしぼりをお持ちしました」と一言添えると、流れの中での自然なサービスとして受け取ってもらえます。

3. 温度で季節感と“ホッと感”を演出

夏は「冷たさ」よりも“ひんやり優しい”温度

夏場はキンキンに冷えたおしぼりも爽快ですが、冷たすぎると人によっては驚きや不快感につながることもあります。
理想は「火照った手や顔に当てたときに気持ちいい」と感じる程度のひんやり感。冷蔵庫や専用機器で冷やし過ぎず、温度ムラが出ないよう管理すると、安定した使い心地を提供できます。

  • ベタつきやすいメニュー(油物・甘いソースなど)が多い日は、冷たいおしぼりの回数を増やす
  • テラス席や屋外イベントでは、冷たいおしぼりを“クールダウンサービス”として前面に打ち出す

「暑い中ありがとうございます。よろしければこちらで少しクールダウンなさってください。」という一言と相性が良い演出です。

冬は「熱すぎない」ぬくもりで癒やしを

冬場の温かいおしぼりは、飲食店が提供できる手軽な“ホットサービス”です。
ただし、熱すぎると持つのも大変で、やけどの原因にもなりかねません。「思わず頬に当てたくなるくらいのあたたかさ」を目標に、適温をキープすることが大切です。

  • 入店直後の一枚は特に丁寧に温度をチェック
  • 「少し熱めですので、お気をつけください」と声を添えて手渡す

このひと手間で、冬の来店体験がぐっと印象深くなります。

4. 香りでお店の“世界観”をまとわせる

香りはあくまで「ほのかに」

フレーバー付きのおしぼりや、アロマの香りをまとわせたタオルは、印象に残りやすい演出です。
ただし、飲食店では料理の香りが主役ですので、おしぼりの香りはあくまで邪魔しない強さに抑えることが重要です。

相性の良い香りの例

  • 柑橘系(レモン・オレンジ):さっぱり感、脂っぽい料理の後に
  • 和ハーブ(ゆず、ひのき、緑茶):和食や落ち着いた空間に
  • ミント系:夏のクールダウン、カフェやバーにも

香りは強すぎると好みが大きく分かれるため、まずは控えめな濃度でテストし、スタッフや常連さんの反応を見ながら調整すると安心です。

コンセプトと香りをリンクさせる

お店のコンセプトやメニューと香りに一貫性があると、「この店らしい」と感じてもらいやすくなります。

  • 地産地消を掲げる店なら、地域の柑橘やハーブを使った香り
  • 和モダンな空間なら、緑茶やひのきを思わせる香り
  • リゾート感のある店なら、シトラスやハーブで「非日常感」を演出

おしぼりの香りを、「店の世界観を最初に感じるツール」として位置づけると、演出に一貫性が生まれます。

おしぼりは、コストがかかる消耗品というイメージが強いかもしれません。
しかし、枚数・タイミング・温度・香り・渡し方を少し工夫するだけで、お店の“もてなしのレベル”を静かに底上げしてくれる心強いパートナーになりますよ!
ぜひ、一度、自店のサービス導線を見直してみてはいかがでしょうか?