「ピンチの後にチャンスあり!」再建を通じて得た組織改革のヒント

「ピンチの後にチャンスあり!」再建を通じて得た組織改革のヒント

企業がどん底に陥るとき、それは突然訪れることもあれば、じわじわと進行していくこともあります。著書『どん底からの会社再建記』で描いたのは、まさにその崖っぷちからの逆転劇。今回はその物語から、組織再建を目指すすべての人に向けた「再建のヒント」をご紹介します。

2019年末、栃木県のレンタルおしぼり会社・三協は本社工場の全焼火災という未曾有の危機に見舞われました。さらに追い打ちをかけるように、その直後には新型コロナ禍で主要顧客である飲食店・旅館が営業自粛となり、売上が前年比3割(7割減)に急落しました。まさに「どん底」からの再建に挑んのですが、社長は「父が作った会社を絶対につぶさない」と覚悟を決め、諦めないリーダーシップで危機を乗り越えます。その奮闘の全記録が、著書『どん底からの会社再建記』に詳述されています。
本記事では、この実話をもとに火災発生後の初動対応、社員・顧客・取引先との関係維持、再建プロセスの課題と工夫、そして組織文化や経営戦略の見直しについて解説します。

信頼を守る初動対応と社員の結束

火災直後、まず取り組んだのは取引先・顧客との関係維持です。幸いにも顧客データが保存されたサーバーは無事で、すぐに取引先へ状況を連絡しました。営業所を通じて他社から代替品を調達し、サービス提供を止めずに続けました。その迅速な対応が顧客に安心感を与え、取引先との信頼関係を保つことができました。

社員にも会社を必ず立て直すと約束し、一丸となって危機に立ち向かいました。社長自ら優先順位を定めて即断即決で対応に当たり、その姿勢が社員の士気を支えて全員を結束させました。

デジタル化と広報戦略でピンチをチャンスに

工場を復旧させた矢先、2020年初頭からのコロナ禍で再びピンチが訪れました。緊急事態宣言で主要顧客の飲食店や旅館が一斉休業し、おしぼり需要が激減。売上は平時の3割程度にまで落ち込みました。しかし添田社長はこの危機にも屈しませんでした。火災からの復旧過程で工場の自動化や社内のデジタル化(DX)を進めていたため、その取り組みがここで効果を発揮しました。固定費を圧縮していたおかげで急激な売上減にも耐えやすく、業務のIT化によって非対面でも事業を回せる体制が整っていました。

さらに、この苦境を逆手に取って新たな営業・広報策にも打って出ました。対面営業が難しい状況下で郵送やインターネットを活用した営業活動を強化し、新規顧客の開拓につなげました。同時に「非常時だからこそメディアに取り上げてもらえる」という発想で、自社の窮状や再建への取り組みを積極的に発信しました。新聞やテレビで取り上げられると、それを見た多くの人々から支援の声が寄せられる好循環も生まれました。危機下でも情報発信を続けたことで、ピンチをチャンスに変えることができたのです。

どん底から立ち直った先に得たもの

未曾有の危機を乗り越えた同社は、その後V字回復を遂げました。おしぼり中心のビジネスモデルを見直し、タオルやマット、ユニフォームなどリネンサプライ事業を多角化。新分野が急成長し、売上も着実に回復しています。まさに「災難は会社を一気に変革させるチャンス」という言葉通りの再建劇と言えるでしょう。

添田社長は「諦めなかったので会社を生まれ変わらせることができた」と振り返ります。逆境は大きいほど、乗り越えたとき会社も経営者もそれまで以上に強く成長できる――この経験がそれを証明しました。また、平時から保険の見直しやデータ管理など万一への備えをしていたことも奏功しました。しかし何よりも、「絶対に諦めない」という信念と素早い行動こそが再建の原動力だったのです。深刻なピンチに直面しても、諦めずに踏みとどまれば必ず活路が開ける――この物語はそう教えてくれます。どん底でも希望を捨てず、ピンチをチャンスに変える姿勢こそが企業再建の鍵となるはずです。